2016年10月05日

10月の言葉!「目利き」

「目利き」

 金融緩和だ、マイナス金利だと、市中に出廻るお金の量をジャブジャブ出し、金利を限りなく0にし、デフレ脱却、2%のインフレを起こし、そして将来物価が高くなるのなら、今のうちに買っておこうという購買意欲を盛り上げ、それが企業収益に貢献し、賃金引上げを惹起し、又消費が増すという景氣の好循環を狙っているのがアベノミクスのシナリオです。
 
 我々借り手には、お金の貸し借りだけを見れば、借り易く又金利も低くなりありがたい世の中です。しかし、一方の銀行(信金も含めた金融機関)はどうでしょう。
 銀行はこの20年、バブル崩壊による不良債権の処理、そして、Bis規制で自己資本充実という経営の健全化、リーマンショックというメガトン級の経済危機、金融円滑法の導入により不良債権の棚上げ、おまけにノーパンしゃぶしゃぶというガバナンスの不正等々、常に監理、監督され、時代の流れに翻弄され続けて来たように思います。
 それを監督する官庁が金融監督庁、今の金融庁です。今までの金融庁の最大の目的は銀行経営の健全化でした。ですから少しでも経営悪化した銀行には公的資金の注入といういわば政府の元での再建をしいられ、時には合併、時には破綻という厳しい処置がなされてきました。これは日本経済とりわけ地方経済を安定化させるためには、まず資金のポンプ役(供給)である銀行の経営体質が万全でなければ、供給が安定してこないという前提でした。
 そこには、金融庁が出す銀行の評価を行なう「金融検査マニュアル」、不良債権をあぶり出す「資産査定」、リスクを丸投げした「信用保証協会依存」というものが銀行にとって最も大切なハードルとなっていました。金融庁に睨まれないよう検査を通ること、銀行が貸し出している貸金を不良債権として処理されないこと、自己資本比率を低下させないため、信用保証協会の保証に頼りリスクをとらないことがいい銀行、いい銀行マンの条件となってしまいました。
 いわば銀行は借り手の中小企業の方を向かず、金融庁というお役所を向いて仕事をしていたわけです。
 
 しかし、アベノミクスで地方創生が唱えられ、今や大きく変化しようとしています。
 平成27年7月に出された金融庁の行政方針です。森長官の覚悟が随所に読み取れるもので、今までの金融庁の金融行政への大転換を指し示すものとなっています。
 まず、金融庁の目的として、「企業、経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大」を一番に掲げ、その下支えをするのが銀行であり、それを指導、監督する官庁が金融庁であると目的を明確にしています。
 そのため銀行に、真に顧客のためになる質の高い金融商品、サービスの提供を義務付け、担保、保証依存する融資姿勢を改め、事業に対する目利き力を高めると共に、同時に経営の健全化を図ってゆくことなどが、方針として掲げられています。
 すなわち、銀行が融資判断する時には、マニュアルのとおりにしていたものを、企業の成長、「将来性」に着目し、銀行自身の「目利き」で実行し、担保、保証ではなく 「稼ぐ力」を評価して融資判断をせよとせまっているのです。
 
 「目利き」という言葉を久しぶりに目にしましたが、そう言えば、昔(今から30年以上前)の銀行マンは時には、自分の判断で融資を実行していたように思います。
 お好み焼きの千房の中井社長の30年も前のお話です。
 創業間もない頃、新規出店をしたいと融資を依頼したところ(もちろん担保も保証人もなく)、その銀行の支社長は中井社長の毎日事細かく記載された現金出納帳を見て融資に応じてくれたと言います。その出納帳には売上経費はもちろん道で拾った10円までも記されていたと言います。
 中井社長の人柄、経営に対する真摯な姿勢、これからが担保になったのでしょう。
 まさに、銀行の事業に対する「目利き」経営者への「目利き」です。
 しかし、それと同時に大切なものは我々事業者の側にもあります。銀行の目利きに見合うだけの目利きにかなうだけの事業に対する展望、事業の将来性、自らの経営力の高さの立証、説明責任です。
 自社の強味、弱味を説明できますか。強味をより強く、弱味を克服する処方箋を持っていますか。自社を取り巻く経営環境の変化に深い洞察力を持って分析でき、その変化の最先端に居続ける術を身につけていますか。自社の進むべき方向性について、自信を持って示し、それを社員と共有できていますか。
 そこを銀行は見るのです。事業性評価というのですが、企業の事業力を評価するのです。それは、中小企業の場合は社長の事業力にほかなりません。
 
 今、銀行は大きく変わりつつあります。過去の財務や担保に必要以上に依存することなく、事業の内容、社長の念い等々をふまえた融資やコンサルティング機能に対応しなければならなくなっています。
 それは、今までのようにいくら銀行の健全性を高めても、いくら不良債権の少ない銀行を創っても、地方経済は活性化しないと分かったからです。銀行の借り手の中小企業が成長発展し、より設備投資や、給与や仕入にお金を使ってくれないと豊かな地方はできない、まさに地方創生はないという考えに至ったからです。
 地方創生というアベノミクスの大方針の中で、銀行が少々のリスクをとり、中小企業を成長発展させることこそが近道であるということです。
 とは言え、どの中小企業も一律に手を差し伸べてくれるものではありません。
 今回の金融庁の方針変更は成長発展をしてゆこうと決心、覚悟し高い志を持っている企業には追い風ですが、現状に満足し、現状維持に甘んじている企業にとって逆風となる大変化であることは、間違いありません。
 共にこの風を追い風にしてゆこうではありませんか。



                             代表社員 前原 幸夫   
posted by 前原幸夫 at 19:24| 今月の言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする