2018年09月01日

9月の言葉!「親と子に捧げる 300号記念!!」


 なんと なんと 
今月お届けする「本氣」は通算300号です。
毎月1回発行、そして新年は「本氣」はお送りしていませんので、年11回。平成3年7月から少し(大分)遅れたりはしますが、それでも毎月欠かさず27年300号です!!

 平成3年と言えば、私は38才。開業して6年が過ぎ、社員も10名程、お客様も150社を超えたころです。今までは、私がほとんどお客様の所へ顔を出していたのが、なかなか叶わぬようになり、その疎遠さを出来るだけ縮めたいという念いからの「本氣」の発行でした。本当に長いお付き合いをいただき感謝です。身体(頭)の続く限り、命の続く限り出し続けますので、よろしくお付き合いください。

 そう言いながら記念すべき今月号、手を抜くわけではないのですが、過去のものを2編、少し長くなりますが選んで載せてみます。それは大塚家具を取り上げたものです。今期(2018年12月期)も8月7日 52億円の赤字見通しと下方修正を発表。これで3期連続の赤字となり、身売りさえささやかれています。ことの発端は今から3年前の父から娘への社長交代から始まっています。最初に私が取り上げたのは2015年3月号(No.261)です。

「大塚騒動」

 最近、とみに企業の事業承継についてのご相談が多くなっています。
 1つは社長の年令、1つは今年から相続税の基礎控除が引下げられたことに対する増税感からだと思います。
 企業30年説というのがありますが、よく言ったもので、30代で創業し、それなりに成長させてこられた社長さんも60代後半を迎え、そろそろリタイアを考えられる方が多いということでしょう。
 しかし、ここで数々の問題があります。
 大きなものは、譲る側の年令、健康と譲られる側の経営者の力量です。
今の70才はお若い。
ですから、さっとリタイアというわけには行きません。それが60代ならばもっと若く、子供さんに社長の座を譲った後も実質的に社長。何の為の社長交代か分かりません。
 しかし、譲る側の社長にも言い分があります。
「後継者の我が子を見ていると、まだまだ社長の器ではない。老骨にムチ打って、私がガンバラねば!」との思いが強くあります。
 一方、後継者の側は、社長になったものの「以前と役割はほとんど変わらず、先代の社長、現会長は自分のやることなすこと、こと細かくチェックし修正をかける。何の交代か分からない。」
「これほど時代が変わっているのに、先代の行っていた経営手法でやりたがり、新しい経営スタイルをなかなか認めてくれない」と、不平不満を持つ後継者も多いのが現実です。

 まさに今の大塚家具の騒動そのものです。
 先代社長が一代で作り上げてきたものを、一橋大学、都市銀行出身の才女が後を継ぐという傍目には何ともうらやましく思われるものが、当人同士、怨念とも言えるような確執が繰り広げられています。
娘二人で身内の後継者がいない私なんぞ、あんな優秀な娘が後を継いでくれたらいいなぁと思いますし、又、創業者の私にとってはないないづくしのスタートでしたから、あれだけの巨大企業を作り上げてくれた先代がいたら、さぞかし経営は楽だろうにと、父と娘、共方うらやましい限りです。
 ところが、現実は逆で先代は後継者が行うことが不安で不安でたまらず、後継者は先代を古くさい目の上のタンコブと思うようです。
 
大塚家具にしても、現会長の親は、タンス職人だったと言います。多分、その父の念いはタンス職人の後を継いで欲しかったに違いありません。
 しかし、大塚勝久会長は父の作るタンスの販売をし、その間学んだ家具販売のノウハウをもって、1969年独立したのです。親からの独立です。その時多分勝久氏の父親も不安いっぱいだったに違いありません。
 それから快進撃を続け、2003年には売上730億円を上げましたが、2013年には562億円と経営不振に陥りました。
 この難局をいかに乗り切るか、従来の成功体験を元にしたやり方か、時代の変化に見合う経営の見直しをするのか、ここが親子の対立だと思います。どの企業にもありそうな話です。

 それではお前はどうするのかと聞かれたら、私ならこうします。
 勝久氏が今の手法で十分この難局は乗り切れると判断するなら、より大塚家具の強味、特徴に磨きをかけることです。
 ニトリや、IKEAにはないもの、大塚家具でしか得られないものに。
それは徹底した仕入に対する目利きであり、高いもの、いいものをより安くという高級化であり、会員制を利用した限定的な顧客の絞り込み、会員としてのステイタスの向上、顧客密着度を上げることによる家具というものではなく、ライフスタイルそのものの提案力の強化です。
 しかし、それだけでは今の変化には対応できないでしょう。
従来の販売手法に磨きをかける一方、住宅建築戸数の減少(少子化、高齢化)、まとめ買いから単品購入、氣にならない接客、自由な買い物ができる売り場づくり、高いというイメージの払拭等、久美子社長の言うこともうなづけます。  
だとしたら、第二創業を久美子社長は、大塚家具というブランドではなく、自らのブランドとして立ち上げ、店舗展開をしてゆく。手法の違う二つの企業がお互いライバルとなり、補完し合い、事業を展開してゆくことが、いいのではないのでしょうか。
二者択一ではなくいいものが残る、そして、お客様に支持されないものは自然になくなるという当たり前の原理原則どおりやってみることです。
 泥試合こそ最も避けなければならないものです。

 以前、ある後継者の社長から、こんな話を聞いたことがあります。
 ある日、先代の社長お父様から、お前が社長をやれと、まだ30代の前半の時言われ、それと同時に会社の実印と通帳、そして父名義の○千万円残高のある定期預金とその印鑑を渡され、その日からお父様は会社に出て来なくなってしまったそうです。
 急な事で驚いたと同時に、父の自分に対する信頼を痛いほど感じ、もちろん父名義の預金には一切手を付けることなく、30年以上一所懸命やってきたということです。

 又、創業50周年、60周年というお祝いに、ご招待されることもよくあります。
その場で目にすることは先代や先々代に対する恩の披歴、感謝の式です。現社長が今こうやって隆々とやってられるのも全て先代や先々代のご苦労、ご苦心の賜物との念いが式全体のベースになっています。
 創業者もいくら立派に大きく企業を成長させたとしても、永遠に社長でいるわけにはゆ
きません。必ず、承継は必要になります。
 その時、俺なんか苦労の連続だったのに、こんな立派な会社の経営をやれるのだから、お前は幸せ者だと、後継者に恩を売る(請求書の発行)のでななく、何があってもお前を信じ、バックアップする。
そして自分が創った会社、自分が継いだ会社を継いでいただくことだけで有り難い。そんな思い(領収書の発行)も必要なのではないでしょうか。

 それと同時に継ぐ立場の方も、親や先祖に対し、こんな立派な会社を継がせていただくことに感謝し、必ずこれを次の代に継なげてゆくことを先代の前で誓うことも必要なのではないでしょうか。
 泥のかけ合いでなく、感謝のかけ合い、親は子を信頼信愛し、子は親を尊敬崇拝することにより、スムーズな事業承継が行なわれるのではないかと思います。
 社長は有限されど、企業は無限です。
真の事業承継とは父が子に継がせるだけでなく、その子が孫に継ぐことで完結されると私は教えていただきました。
 真の事業承継を私も行なう決心覚悟です。




次にもう1編
2017年6月号(No.286)です。

「有明反省会」

 日経新聞で「有明反省会」という見出しが目に留まりました。大塚家具の記事でした。
 大塚家具が東京都の有明に本社があるため、「有吉反省会」をもじって「有明反省会」という見出しになったようです。
 あの大塚家具です。もう2年前になりますが、先代社長が一代で築いたビジネスモデルが時代に合っていないと後継者である娘が父を社長の座から引きずり降ろし、自らが社長となったあの大塚騒動、お家騒動のあった会社です。

 私も2年前この「本氣(まじ)」で取り上げました。2015年(平成26年)3月号です。早いものであれから2年経ちました。
 今、読み返してみますと興味深い文章が並んでいます。
「泥試合こそ避けるべき二者択一でなく、いいものが残り悪いものは消える。この原理原則に従い、父子のビジネスモデルの併用を」と言っています。
 しかし、現実は父親を排除し娘の思うビジネスモデルに転換した2年でした。結果は大苦戦ということです。
 ピーク時の売上730億円あった売上は2016年(平成28年)12月決算では463億円と大幅に落ちています。しかも45億円の赤字となりました。
 原因は、娘が先代のビジネスモデルを否定し換えた結果、お客様や社員がついてこれていないということです。当り前の話です。
 長年、先代が培ってきた販売スタイルにお客様も社員も慣れています。一氣には変わりません。
 お客様も困惑しています。今まで大塚家具は高級路線でした。しかし、お客様に身近なイメージを作ろうと中価格帯の品揃えを強化するという方向転換をお客様は安売りだと思います。
 安売り店なら、ニトリと比べます。ニトリと比べれば、はるかに高い価格ですから、お客様は離れてゆきます。
 接客のスタイルも抜本的に変えました。今までは会員登録をし販売員が付き添い、まさに付っきりで店内を案内し、説明をするというスタイルでしたが、これではお客様が自由に店内を見て廻ることができないとの理由で、販売員が必要と思われるお客様にのみ、お客様の様子を察し、お声掛けをする方式に変わりました。
 週末の新宿のショールームは家族連れで賑わっているそうですが、「以前は付いて廻られることが煩わしかった」という声がある一方で、来店客の多くは一通り店内を見て廻るとそのまま出口に向かわれるそうです。お客様との距離、接客のタイミング、販売員の質と量が不足しているとのことでした。最適な販売員を配置し、接客のテクニックを上げてゆく必要があるということです。
 
2代目の挑戦は始まったばかりで軽々しく結論をいう事は出来ませんが、新しいビジネスモデル、販売スタイル、店舗イメージを構築、浸透させるにはまだまだ時間がかかりそうです。先代のやり方が古く、2代目の新しい眼、新手法が必要なのは世の習い、世の常です。
 しかし、その時大切なのは、先代のやり方、ビジネスモデルを否定することではありません。先代と別のものを創ることでもありません。
 先代の理念、戦略、ビジネスモデル、手法等々を包含する一廻り大きいビジョン、理念、戦略、ビジネスモデルに組み替えるということです。
 先代の経営を全肯定し、心からの畏敬の念、感謝の念を胸に刻み、それをベースに後継者がよしとするあり方、やり方に変えてゆくということです。
 全く別々のものを創り出すのではなく(新生ではなく)創生です。先代のものを全てのみ込み一廻り大きく組み替えることです。
 経営創生とでも言うべきものです。

 その時一つだけ重要なことがあります。後継者は先代より一廻り大きな理念、戦略、ビジネスモデルを持つわけですから、当然、先代よりも一廻りも二廻りも大きな人間力が必要だということです。これがなければ、うまく行くはずがありません。
 大塚家具の大苦戦も2代目久美子さんの才はあるが、徳(人間力)がまだまだ先代に追いついていないということの表われだと思います。才だけでは、お客様や社員はついて来ません。
 徳あるところに人は集まります。 後継者の健斗を心よりお祈り申し上げます。


                                                     代表社員 前原 幸夫
posted by 前原幸夫 at 00:00| 今月の言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする