2021年05月01日

5月の言葉!「どうなる?贈与税」

「どうなる?贈与税」


 さまざまな相続税の節税対策が税務当局から網をかけられている今日、一番手軽で効果的な方法が生前贈与であり、しかも毎年連続して贈与を繰り返す手法です。
 年110万円までの贈与額に対して贈与税はかかりませんし、複数の子や孫に贈与することによりその効果は増してゆきます。
 子や孫に毎年110万円ずつ現金を贈与します。子どもが2人、孫が3人いるとしたら、1年間に110万円×5人=550万円無税で贈与できます。
 これを10年続ければ、550万円×10年=5,500万円となります。こんなものでは物足りないと言われる方には贈与税を支払っての贈与ということになります。
 110万円の基礎控除を差し引いた金額が200万円までは税率が10%です。
 仮に年310万円の現金を贈与したとしたら、
 310万円−110万円=200万円 200万円×10%=20万円 となり20万円の贈与税が課せられます。20万円÷310万円=約6.45%の税率です。
 これを子や孫5人とすれば年間に310万円×5人=1,550万円(贈与税額20万円×5人=100万円)となり、10年間続けるとしたら1,550万円×10年=1億5千500万円贈与できます。(相続財産が減少します)
 これに対する贈与税は100万円×10年=1,000万円となり、1億5千500万円の財産を1,000万円の贈与税で移転することができます。子や孫、時にはひ孫がいて年数を長くすれば効果は一層上がります。
 しかしこの贈与税少し雲行きが怪しくなっています。
今年度の自民党・公明党の与党税制調査会の令和3年税制改正大網の、「令和3年度税制改正の基本的考え方」にこんな記述があるからです。

(3)相続税・贈与税のあり方
 @教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に関わる贈与税の非課税措置の見直し(本文省略)
 A資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討
 「高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており、結果とし 
  て若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、  
  その有効活用を通じた、経済の活性化が期待される。
  このため、資産の再分配機能の確保に留意しつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要な課題となって  
  いる。
  わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一 
  方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。
  諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同
  時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。
  今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年 
  課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検 
  討を進める」(『令和3年度税制改正大綱』より一部抜粋)
                       

ここにいう「本格的な検討を進める」という文言が税制調査会の意氣込みであり、あまり遠くない時期に改正が行われるのではという見方です。
上記Aの文章の概要は財産をいっぱい持っているのはお年寄りなのに、長生きするのでその資金財産が若い世代に廻らない。若い世代にもっと早く多くの財産が移転すれば経済活性化に寄与するので、早期の世代間移転を促進するための税制の構築が大切であると言いながら、そう言っても今の生前贈与はお金持ちが毎年分割して贈与を繰返すと相続税の負担回避を招いている。これに対して一年毎に(暦年で)贈与税を課税してゆく今の仕組みを見直し、一定期間5年以内とか10年以内とかに贈与したものは相続税に加算して課税するとか(今でも相続開始前3年以内に相続人に贈与した財産は相続財産に加算される)
 暦年課税の税率を全て、例えば55%の最高税率にし、届出があれば納税猶予的に無税にし、その無税となった贈与財産額を相続財産に加算してゆく制度とかいろいろ考えられます。
要は世代間移転を早く多額にし、かつ相続税と贈与税を一体的に課税し、財産の移転時期により課税の不公平が生じない制度となれば後者が有力と思われます。

すなわち贈与の届出さえすれば、毎年は無税で子や孫に贈与することができるようにして、いつでも誰にでも無税で財産移転を行えるようにし、その代わりその移転(贈与)された財産は後で相続税に加算して相続税を課税するという制度なら上記2つのニーズを同時に満たすことになります。
(もちろん届出をせず財産を移転する場合は高い贈与税を支払ってもらうという補充も必要となりますが)
いずれにせよこれからの改正、目が離せません。

                                          代表社員 前原 幸夫
 
posted by 前原幸夫 at 00:00| 今月の言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする