「えっ! なにこれは」
最近「えっ! なぜ?」と思うことがしばしばあります。
特にインボイスの導入と103万・130万円の壁の問題です。10月1日から、すでに消費税のインボイス制度はスタートしています。この必要性が私にはさっぱり解りません。
今の消費税は、平成元年に導入されました。その4年ほど前の昭和60年、政府は売上税というものを導入しようとしましたが、反対により廃案となりました。昭和60年は、私の税理士開業の年であり、今でもよく覚えていますし、私の40年の税理士としての歩みは消費税の歩みと言っても過言ではないほど消費税の変遷に付き合いました。
売上税は、全ての事業者に売上の1%を国に納めさせるという税金でした。製造・卸・小売・そして消費者、全ての財の移転時に1%課税し、それを消費者が負担してゆく仕組みで、税の多段階課税(税の蓄積)が問題となり廃案となりました。今思えば、この売上税が簡素でシンプルでよかったと思っています。売上税が国民の大反対に遭ったため、これに修正を加え一般消費税なるものが平成元年に登場致しました。
売上にかかる消費税から、仕入・経費等に支払った消費税を差し引き納税する方式を取り、その計算もインボイスなどは、必要のない帳簿により計算する帳簿方式で、課税売上3,000万円までは、消費税の申告・納税もしない免税事業者とし、帳簿方式が面倒な零細企業(当時課税売上5億円以下)は、簡易課税という2段階の特例計算を許容し税率も3%でした。
それから35年、帳簿方式はインボイス方式となり、免税事業者の要件は3,000万円から1,000万円に、簡易課税の要件も5億円から5,000万円に、簡易課税は2段階が6段階になりました。そして税率は3%から10%と8%の複数税率となっています。
元々日本の消費税は帳簿方式でした。これをインボイス方式にすること自体にムリがあり混乱を招いています。インボイスなどしなくても、免税点(消費税の課税されない売上)を1,000万円から500万円または300万円に引き下げ、簡易課税制度を止め、複数税率を10%に統一する!これだけで十分事足ります。全く今回のインボイス導入の意味が解りません。
次に、今話題となっている「103万円の壁」「130万円(106万円)の壁」の問題です。
「103万円の壁」は税制の問題、「130万円の壁」は社会保険の問題ですが、根は一緒です。
これらの制度を導入した当時、サラリーマンの夫と専業主婦の妻ということを前提に作られたのでしょう。それから何十年が経ち、社会・家族、そして女性の労働市場への進出、時代は大きく変わりました。制度自体が金属疲労を起こしているのかもしれません。
最近の最低賃金の上昇により、より短時間で103万円、130万円に達してしまうため、企業側は人手不足に拍車がかかる事にも繋がります。
「103万円の壁」とは、妻のパート収入が103万円を超えると夫から配偶者控除を受けられないという問題です。ただしこれは別途「配偶者特別控除」というものがあり、幾分緩和されているのですが、一番の問題は、夫に配偶者手当(家族手当)の支給要件が「妻の収入は103万円以下」となっている企業が多く、この手当だけで年間12万〜24万円の夫の収入が減額になるため、103万円以上は働かないという結果になります。
「130万円の壁」は、社会保険の扶養に入れるかどうかの基準になります。妻が130万円未満のパート収入であれば、社会保険に加入する必要はなく、130万円以上の場合は加入し保険料を納めなければなりません。料率が15%くらいになりますので、約20万円の負担が増え、手取り額が大幅に減少してしまいます。
新聞報道によれば、103万円の壁に対し家族手当の新しいガイドラインを作り企業に協力を求め、130万円の壁には最高2年間は130万円以上でも扶養に入れるようにする措置を作るとされています。なんというお粗末な対応なのか。
これらは個人単位ではなく、夫婦単位(家族単位)で控除・加入する方式にすれば解決できます。税制で言えば、夫婦二人で例えば100万円の控除を認め一人しか働かない場合は一人から100万円の控除、二人なら100万円分有利なように控除する。夫の収入、妻の収入関係なく一定の控除を行なうことで解消できます。
社会保険では、原則全員が加入し保険料を負担してもらうか、夫婦の年収で保険料を算定してゆくのいずれかでしょう。抜本的に変えるなら厚生年金は税により最低保障年金的なものを創り、その上乗せは自助努力で各種年金保険・確定拠出年金・iDeCoなどを組み合わせて国民一人一人が自ら老後に備えてゆく。意識をしっかり持ってもらい、健康保険については、夫婦合算所得に保険料率を乗じた保険料方式とする等、抜本的な改革が必要でしょう。
対策があまりにも場当たり的なものに驚くばかりです。
代表社員 前原 幸夫

